「おまえ、マンションの反対運動してるんだって?」「あぁ、一応ね」「なんでまたそんなことしてるの」「なんでって、建って欲しくないから」「建って欲しくないって、おまえ何の仕事してるの?おかしいじゃん!」
大学時代の友人からの電話である。彼は、大手のゼネコン設計部に勤めていた。
「そうかなぁ。何でも建てればいいっていうものではないし、周辺の環境を考えると賛成できないからね」
「でも、マンションが建つ地域なんだろ?そこに建てるなっていうのは、住民のエゴだぜ。」
「エゴなんていわれるとは思わなかったよ。まぁ、君も自分の家の隣に計画されたらそういう気持ちになるよ。」
「いいや、ならないね。それが俺の仕事だもの。まぁ、そんなことしてたら飯食えなくなっちゃうから、いい加減にやめることを勧めるよ。じゃぁね。」
彼だけではなかった。私の廻りにも私の行動に疑問を投げかける人たちがいた。
「どうせ建っちゃうんだから、そんなのに熱を入れても無駄でしょ?」
「建たないわけないじゃん!これが建たなければ、俺の物件なんてもっと建たないよ」
「デベロッパーは、利益率もちゃんと計算して計画しているんだから、何言っても計画が変更されるなんてあり得ないよ。そんなことわかっているでしょ?」
確かに彼らの言うことには一理ある。というか、それが正論なのかもしれない。既成の住宅地に新参者が来たら「ここでは、このようにしてもらわないとならない」というのは、住民のエゴなのか?そんなことを考えていると、次の一手などまったく思い浮かばなかった。
「やはり、計画変更も無理かなぁ。むしろ工事協定書の内容を充実した方が、近隣の人たちのためかもしれない。」などと消極的な方向へ気持ちが落ち込んでいた。続きを読む