工事協定書は、工事を行うことを認めた上での書類ですから、できれば建てて欲しくないと思っている住民側から積極的に提案するものではありません。
今回のケースでは、既存の住宅を解体するにあたり、解体工事の協定書を作成しました。この解体工事協定書を基に工事協定書を弁護士とともに検討しました。
住民側は、なるべく被害を受けたくないので、いろいろと条件を書くわけですが、弁護士からのアドバイスでなるほどと思った内容を紹介します。
1.協定書はかならず締結しなければならないものではないということ
協定書の内容が合意できなければ、相手方は法律に違反しない限り何でもできてしまう。また、工事による損害が生じても住民側で因果関係を立証しなければ取り合わないという対応も可能になってしまうことを念頭に置いて交渉すること。
2.住民がやられて困ることを最優先に交渉すること
例えば作業時間の項目で土日は休みにしろと要求しても、工期の問題で土曜日は作業をさせて欲しいといわれる可能性が高い。
それよりも、確実に祝祭日は休みにするとか、平日の作業時間も部屋の内装等、重機を使用せず、かつ、騒音等がでない軽作業については、片づけを含め例外的に午後8時まで作業をすることを認めるなどの譲歩案も考えておくこと。
3.工事に伴う被害に関して
被害については、因果関係がもっとも重要になる。一般的な表現では、「工事の起因により」となるが、これはまさにその因果関係を表している。しかし、これだと被害が生じたとき、相手方からは、本件マンション建設によって生じた障害かどうかわからない、すなわち、「起因」しているとは言えないなどと言い逃れが可能になってしまう。
かといって、電波障害や風害が生じた場合に全て補償するなどいうはずがない。
この点、裁判等になれば被害を受けた方が因果関係について立証する必要が生じるので、調査費用などの負担を考えると非常に難しくなってしまう。
そこで、因果関係について疑義が生じた場合には、双方協議の上、因果関係の有無を判断することとし、協議が整わない場合には、相手方費用負担で調査するといった内容の条項を付け加えるとよい。
損害が生じれば賠償するのは法律上当然だが、因果関係の立証の点で言えば、この条項で定めておくことで、あとあと協議という名目で相手に苦情をもっていくこともできるし、相手方に費用を一時立て替えてもらっておいて、共同で調査し、因果関係があれば相手方が調査費用を全額負担するなどのことも考えらる。